前回(第1回)では、人材戦略が「人事施策(採用・研修・制度改定など)の網羅的なTo-Doリスト」であってはならず、経営戦略を実現するための「人と組織に関する選択と資源配分(リソースアロケーション)」でなければならないことを論じた。
すべての人事課題に均等投資する「ピーナッツバター・アプローチ」は戦略の不在を意味し、痛みを伴うトレードオフを受け入れて初めて、真の人材戦略はスタートラインに立つ。
しかし、経営トップが「我が社はこれからサービス型ビジネスへの転換に全リソースを集中させる」と高らかに宣言し、大方針(事業戦略)が固まったとしても、人事部門の苦悩はそこからが本番である。
「では、具体的にどのような人材が、いつまでに、何人必要なのか?」
この問いに対して、筆者の支援経験では、経営層や事業部門の責任者が、具体的な職種・スキル・人数まで明確な答えを持ち合わせているケースは必ずしも多くない。
そうした場面でしばしば聞かれるのは、「グローバル人材」「イノベーション人材」、そして昨今であれば「AI人材」といった、手垢のついた抽象的なバズワードである。
経営戦略と人事戦略の間には、深く広い「谷」が存在する。この谷に橋を架けず、経営の言葉から直接「必要な人材像」へジャンプしようとすると、人事部門は必ず転落する。
解像度の低い要件のまま採用市場に飛び込んでミスマッチを起こし、現場からは「人事が連れてくる人間は現場で使えない」と冷笑されることになる。
本連載の第2回では、経営戦略の抽象的なスローガンを、具体的な「仕事」「役割」「スキル」「要員数」へと論理的に落とし込んでいく【翻訳プロセス】を解き明かす。
人事部門が受け身の「御用聞き」から脱却し、経営・事業側と対等に議論するためのフレームワークを提示する。

